​パネル討論

日時:2022年8月6日(土), 9:30-12:00 JST

テーマ:3言語(以上)を育てる教育を考える
[録画事前共有、日本語字幕、日本手話通訳]

要旨

日本の中等および高等教育機関における第 2 第 3言語の教育実践例より、どのような考えのもとにカリキュラムが組まれ、3 言語が学習者の言語習得に如何に影響しあい、どのような教え方をすれば、どの程度の言語能力が身につくのかを探る。また、2 言語習得者に対する 3 言語習得者の優位性は何なのか、日本ではそれがどのような意味をもつのかについても考える。

 

登壇者

(1)金正泰(コリア国際学園)・太田真実(朴苑眞)(大阪大学大学院博士後期課程)

多言語的な教育環境で育まれる生徒の複言語能力:コリア国際学園の事例

(2)岡典栄(明晴学園)

明晴学園の英語教育: L1=日本手話, L2=日本語, L3=英語

(3)横井幸子(大阪大学)・依田幸子(北海道札幌国際情報高校)

札幌国際情報高校における3言語以上を育てる取り組み:トランス・ランゲージング・スペースと間領域性

(4)山崎直樹(関西大学)・小川典子(愛知大学)

複言語話者という選択:関西大学「クロス留学」に参加した学生たち

​発表要旨

​パネル討論 1

多言語的な教育環境で育まれる生徒の複言語能力
─ コリア国際学園の事例 

金正泰(コリア国際学園)・太田真実(朴苑眞)(大阪大学大学院博士後期課程)

コリア国際学園(KIS)は、大阪府茨木市にある中高一貫のコリア系インターナショナルスクールである。日本人、在日コリアン生徒だけでなく、韓国や中国からの留学生など、多様な文化的背景を持つ生徒たちが在籍している。かれらの中にはL1、L2、L3が明確に区別できない生徒が多い。幼少期より複数の言語に触れながら成長してきた生徒たちが、自由に自身を表現できる環境で共に学び合っている。教職員の文化的背景も多様で、全教職員が2言語以上を駆使することができる。そのため、学園内では日本語、コリア語、英語、中国語が日常的に飛び交っている。本発表では、コリア国際学園の言語教育、海外研修、生徒や教職員の言語状況などについて触れながら、学園の多言語的な教育環境と、そこで育まれる生徒の複言語能力について発表を行う。

​パネル討論 2

明晴学園の英語教育
─ L1=日本手話, L2=日本語, L3=英語 ─

岡典栄(明晴学園)

明晴学園は日本手話と(書記)日本語で教育を行うバイリンガルろう学校である。児童・生徒の第一言語は日本手話で、全ての教科の授業言語は日本手話であり、児童・生徒会活動等を含むすべての教育活動は日本手話で行われる。
日本語は第二言語、英語は第三言語として教えられている。日本語が幼稚部から導入されているのに対し、英語は2020年に小学校で教科化されるまでは中学生になって初めて学ぶ言語であった。したがって学習年数には大きな差がある。しかし、日本語・英語ともに学習して習得する言語であるという点では同等であり、日本語に苦手意識を持っている生徒でも英語は苦手ではないという場合もある。
音声は全く使用せず、読み書きだけで、日本語・英語を学習しているが、日本語を第二言語として学習した経験から、日本語と英語の対照のみならず、日本手話と英語の対照言語学的な方法で学習が進められるので、学年相当の英語力は身につけられている。

​パネル討論 3

札幌国際情報高校における3言語以上を育てる取り組み
─ トランス・ランゲージング・スペースと間領域性 ─

依田幸子(北海道札幌国際情報高校)・横井幸子(大阪大学)

日本の高校におけるロシア語教育は、英語に偏重してきた日本の外国語教育政策下にあって中央政府の路線から外れる多言語教育政策であり、地元からの積極的な働きかけによって実現・存続してきた。札幌国際情報高校は、学校全体で多言語・多文化教育に積極的に取り組んでおり、生徒たちは第3言語をフォーマルに学ぶ機会として第2外国語の授業を2年次から開講している。この学校が推進する多言語・多文化主義は外国語教育内にとどまることはなく、全学科・全科目から各種学校行事やプログラム、日常の授業に至るまで徹底して貫かれている.札幌国際情報高校では、学校全体で異なる教科の教員がコラボレーションすることで、教科横断的に多言語・多文化共生の空間が作られている。本報告では、生徒たちが自分たちの持っている言語資源を最大限に活用しながら、複数言語の能力を伸ばし、発揮し、同時に多様性への理解や柔軟な思考力を培っていく様子を紹介する。

​パネル討論 4

複言語話者という選択
─ 関西大学「クロス留学」に参加した学生たち ─

山崎直樹(関西大学)・小川典子(愛知大学)

関西大学外国語学部では、「Study Abroadプログラム」として、2年次に1年間の留学プログラムに参加することが全員必須となっている。「クロス留学」は、「Study Abroadプログラム」の中でも、英語を主専攻言語とする学生が英語圏以外の国へ留学し、英語と現地の言語を同時に学ぶことができるという趣旨のプログラムで、希望者は1年次に第二外国語として学習した言語を使用する国へと留学することになる。
本発表では、関西大学「クロス留学」に参加し台湾へ留学した学生の事例より、彼女たちがなぜ「クロス留学」への参加を選択し、英語だけでなく中国語も学ぼうとしたのか、そして学生たちの言語能力にはどのような特性があるのかを探る。また、「クロス留学」は学生たちにどのような影響をもたらしたのか、「クロス留学」の意義についても考えていきたい。