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ワークショップ

ワークショップ I

日時:2023年8月3日(木), 15:00-18:00 JST

 

エスノグラフィー入門:日常の言語実践の研究方法として

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講師:柴山真琴(大妻女子大学)

大妻女子大学家政学部・大学院人間文化研究科 教授

専門は発達心理学、質的心理学。二言語交錯環境を生きる家族の発達過程に関心がある。最近は、海外居住の国際結婚家族の子どものバイリテラシー形成過程を二言語実践への共同参加過程として質的に解明することに取り組んでいる。主要な論文として、以下のものがある。

 

文化人類学で開発されたエスノグラフィーは、社会学での展開を経て、今日では教育学・心理学・看護学など複数の学問分野でも広く採用されている。エスノグラフィーは、質的調査法の中でも、人々が生きる社会文化的環境の中で人々の営みを丸ごと捉え、人々が他者やモノと関わりながら行為や発話を生成する過程を複眼的な視点で理解しようとする点に特徴がある。従って、エスノグラフィーは、人々の日常活動における言語的やりとりや意味の交換過程を、その時の状況や行為から切り離さずに捉える際の有効な研究法にもなると考えられる。
当日は、まず講義において、エスノグラフィー(特に「マイクロ・エスノグラフィー」)の基本となる理論的基盤と技法について解説する。それを踏まえて、ワークショップでは、エスノグラフィーの主要技法の一つである参与観察を取り上げ、参与観察の進め方を疑似体験するための演習を行う。この演習は、個人による観察練習とグループでの意見交換を中心に進める予定である。映像データを用いた観察演習を通して、問いと観察の形を変えながら段階的に観察を深めていくやり方を習得することを目指す。​

<主要論文>
柴山真琴(2002)「幼児の異文化適応過程に関する一考察:中国人5歳児の保育園への参加過程の関係論的分析」『乳幼児教育学研究』 11, 69-80.[日本乳幼児教育学会「学術賞」受賞]
柴山 真琴, ビアルケ(當山) 千咲, 池上 摩希子, 高橋登 (2014) 「小学校中学年の国際児は現地校・補習校の宿題をどのように遂行しているのか:独日国際家族における二言語での読み書き力の協働的形成」『質的心理学研究』 13, 155-175. [日本質的心理学会「学会賞」受賞]
ビアルケ(當山) 千咲, 柴山 真琴, 高橋 登, 池上 摩希子(2019)「継承日本語学習児における二言語の作文力の発達過程:ドイツの補習校に通う独日国際児の事例から」『日本語教育』172,102-117. [日本語教育学会「論文賞」受賞]

 

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ワークショップ II

日時:2023年8月7日(日), 16:00-18:00 JST

 

複数言語生活を生かした言語教授法:リテラシーを育むための実践講座

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講師:加納なおみ(国学院大学)

国学院大学 教授。

専門はリテラシー教育、バイリンガル・マルチリンガル教育。シカゴ大学で修士号(哲学人文学)、コロンビア大学で博士号(バイリンガル教育/国際教育学)を取得。国内外の大学及び大学院(シンガポール国立大学、早稲田大学、津田塾大学、お茶の水女子大学など)で言語教育に携わり、シンガポール・United World College of Southeast Asiaでは国際バカロレア・言語Aプログラムを指導。「トランス・ランゲージング」を含む思考力重視のバイリンガル教育、リテラシー教育に関する研究と教育実践に取り組んでいる。

概要

近年、言語教育では「モノリンガル的視点」から「マルチリンガル的視点」へのパラダイムシフトが進んでいる。このような言語教育界の潮流を踏まえ、本ワークショップでは「トランス・ランゲージング(TL)教授法」に焦点を当てる。20世紀ウェールズで少数言語保全のために生まれたTL教授法は、内容理解を重視し、言語の四技能(読む・書く・話す・聞く)を統合しながら二言語でのリテラシー能力強化を目的としている。そのためTL教授法は、多言語話者の柔軟な言語使用に根ざし、複数言語使用を規範・標準とする。学習者の持つ言語・非言語資源を総動員して意味生成・理解を促進し、より複雑な思考活動を通じて「知識の構築」とマルチリテラシーズ育成を目指す教授法として、近年では外国語教育も含み世界各地の多様な教育現場で広がりを見せている。ワークショップでは、複数言語使用を標準とするTLの学習者観など基本的な理論をわかりやすく解説し、TL教授法の特性や現実の言語教育現場における役割・可能性を考えながら実践的な授業プラン作成に繋げていく。

<関連分野の主な業績>

García,O., and Kano,N.(2014) Translanguaging as process and pedagogy: Developing the English writing of Japanese students in the US. In J.Conteh, and G. Meier.(Eds.), The multilingual turn in languages education: Opportunities and challenges. pp.264-283. Clevedon: Multilingual Matters. 

加納なおみ(2016)「トランス・ランゲージングを考える−多言語使用の実態に根ざした教授法の確立のために」 『母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究』12, pp.1-22.

湯川笑子・加納なおみ(2021)『「トランス・ランゲージング」再考-その理念、批判、教育実践–』『母語・継承  語・バイリンガル教育(MHB)研究』17,pp.52-74.

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